でいちゅうのはす

ワナビーの随想めいた日記のようななにか

12月30日 リップルショックを振り返る

XRPのことについて書いてきて、触れないと不自然だから、リップルショックについて書こうと思う。SEC提訴に端を発したドタバタ劇だ。

 

12月23日、リップル社がSEC(米国証券委員会)に提訴されて、かつ提訴した長官はその翌日に辞任した。XRPの市場価格は暴落し、段階下げをして29日には20円を割りこんだ。まだ下げは終わっていないと見るのが一般的で、最終的な影響は引き続き今後の経過をみないといけない。

 

ちなみに僕もXRP保有していたが、23日に全部売った。幸い利益が手元に残った。なので個人的には終わった問題となってしまっているが、記録は必要だ。

 

以降、大雑把に書く。事実というより僕の理解を書いているので、参考程度にとどめて欲しい。

 

もともとリップル社が保有するXRPは、FinCEN(米国金融犯罪執行機関連絡室)などの当局から、『通貨』ないし『商品』として認められてきた。通貨に関わる法律に準拠するという確認を経て、リップル社は、国際送金やインターバンク送金のブリッジ通貨として、システムの売り込みを図ってきた。『今までにない新しい商品、新しいビジネスモデル』での活動である。

 

リップル社はXRPを仮想通貨として仮想通貨取引所に上場する一方で、送金業者や銀行に、インセンティブプログラムーーようは、XRPを化粧品の試供品みたいに売り込んでいたと聞く。『現在の送金システムは高くて不安定でお困りでしょう。そこにリップル社のシステムとXRPを使えば、安く安全に送金できます。使っていただけるならいまならお試し分はお安く提供しますよ』みたいなことを言って売っていたのだと想像する。

 

新しいものを売るのであるから、業者に特別割引をしてXRPを渡すインセンティブプログラムーー要は値引きーーを提供したり、新しいものに尻込みする顧客には試行契約を締結して、必要なものを適宜、販売・貸与・提供するのは当然かと思う。

 

今回の提訴を受けて販売所BFが「当社はインセンティブプログラムの提供を受けていません」と表明していたが、XRPが通貨ないし商品であれば一部値引きは別に悪いことではないし、後述するが日本ではXRPの証券性は否定されている。余計なお世話というべきものだ。

 

話を戻すと、そんなふうに活動していたリップル社に、SEC(米国証券委員会)が『XRPは証券では?』とわざわざ名指しで言ってきた。

 

よく指摘されているように、他にも違法と思われる仮想通貨はたくさんある。中身を仔細にみれば、まともな活動をしプロジェクトの進捗もあるXRPは、訴えられるにしても違法性は低く後回しだろうと言われてきた。そこをわざわざ訴えてきたのは、XRPにはリップル社という「訴えるための主体」を持つこと、SECが和解金を取れそうなことが理由だと考えられる。

 

ここで一度振り返ってみる。FinCENもSECも米国の規制当局だ。なのに、当局によって言うことが違う。一方は通貨だと認定しているのに、もうひとつは証券だと主張してきているのである。米国でも縦割り行政を感じさせる事案である。

 

そしてこの縦割り行政というのは、本来的に『今までにない新しい商品、新しいビジネスモデル』と食い合わせが悪い。当局ごとに見解が異なると、企業活動に整合性が取れなくなるからだ。

 

これはリップル社だけでなく、新しいビジネスモデルを掲げる新興企業はどこも同じだろう。ウーバーやエアビーも規制当局から訴えられている。いくつもの出版社から、彼らの企業活動の歴史をまとめた本が出ている。それらを読んで見るとわかるが、ページの大半が、規制当局との戦いに割かれている。リップル社も旧社会・既得権益層に足を引っ張られ、この泥沼の戦いについに突入したと見えることができる。

 

リップル社も、SECの指摘に対し、無策ではなかった。そもそも証券法の対象外だという主張、もともと現行法が曖昧なのがいけないので、新法を制定ないし解釈を決定するためにロビー活動(このあたりは立法たる国会の権限だ)もしていた。SECにも個別に折衝し、法律が明確になるまではSECは提訴しないという覚書を何回か取り交わしていたらしい。

 

この調整はうまく行っているという話だったが、2020年の初冬には、リップル社本社の海外移転をCEOがほのめかすなど、立法が遅々として進まない様子も見て取れていた。僕としては新しいビジネスであればそういうこともあるだろう、という感想だ。

 

 

ところで、日本やイギリスを始め、仮想通貨(暗号資産)の法整備を進めた各国では、XRPの証券性はすでに否定されている。

 

12月に証券性問題について、実際に訴えを起こしてきたのは米国だけ。しかも後ろめたいことを証明するかのように、訴えの翌日、SECの長官が辞任している。普通の人の目には見えない、政治的な力が働いていることは明らかだった。

 

共和党民主党の争いなのか、米国と中国との争いなのか、それともSECの思惑がその争いに利用されているだけなのか。外からではわからない。ひょっとしたら当人達もわかっていないかも知れない。

 

そういう政治的な面倒くささ、不透明さが、XRPにはつきまとう。訴訟も長引くと予想される。そうなれば、別の国のプロジェクトが、リップル社とXRPをキャッチアップしてくる危険性がある。

 

政治・行政・司法と国内外のいろいろな権力が群がってくるということは、それだけ利益のポテンシャルが大きい案件だとも言える。その分、進行には困難が予想される。障害は他通貨やSECだけではないだろう。リップル社はぜひこの戦いを勝ち抜き、初志を貫徹してもらいたいと思っている。これからも応援している。

 

ただ、ビジネスとしては面白い案件なのだが、投資案件としてはリスクが高まり過ぎだと判断した。そもそも仮想通貨は利益にかかる税金も高い。なので仮想通貨ーー暗号資産からは、やや勝ち越しで卒業させてもらうことにした。これが今回の僕の顛末である。